神奈川大学オープンキャンパス2014 スペシャルインタビュー

2014年の夏に開催された神奈川大学オープンキャンパス。 電気電子情報工学科では各研究室を実際に見て触れられる『研究室見学ツアー』を実施しました。 ここでは見学ツアーで説明しきれなかった研究や、研究室にまつわるエピソードを紹介します。

超伝導という現象

私が研究している超伝導というのは、低温にすると電気抵抗がゼロになる現象のことで、身近な話題だと、リニアモーターカーに利用されています。当研究室では、超伝導現象を起こす新しい材料を見つけて、新しい分野で活かすための研究をしています。超伝導は私が学生時代に所属していた研究室で扱っていたテーマの続きで、神奈川大学では研究室を開いて29年目になります。ものづくりの研究は時間がかかるもので、研究の基本になっている原理は見つかってから55年くらい経っています。現在の研究内容は超伝導を用いたサンドイッチ構造を調べていて、超伝導体でアルミニウム酸化膜を挟んだ接合の磁界測定を行っています。強い非線形性を持つ微細構造を作り出すのに約10年、磁界測定研究も約14年の時間を費やしてきました。実現したアルミニウム酸化膜は原子10個分くらいの薄さ(数ナノメートル)で、電気が流れても抵抗がない薄さになっています。どういうことかというと、電子が波の性質で薄い酸化膜を抜けていく状態になっていて、例えば音波が壁の向こう側に伝わって聞こえるイメージで、アルミニウムの膜を電子が通り抜けていくのです。

このアルミニウムの膜を超伝導体同士で挟むと、電子が抵抗なく通り抜ける超流動という現象が起こるのですが、れを電子デバイスに応用しようと考えております。解明することができれば、小さな電気の流れ(磁界)が測定できるようになり、心臓や脳で生じる微弱な電気信号による磁界の変化も測定できるようになります。将来的には心臓や脳の中で何が起きているのかを推定し、体のメカニズムの核心に迫れるかもしれません。

Image  Engineering  Laboratory
超伝導素子の作製と測定には真空装置と極低温が必要

超伝導という現象を起こすためには、超伝状態になるニオビウムという金属を−270度くらいまでの低温にすることが必要で、ニオビウムとアルミニウムの膜を作るためには真空状態の環境を用意しなければなりません。このような日常の生活環境とは切り離された状態を作り出すには特別な装置が必要なのですが、既存の装置では実現できないので自分自身で作製用真空装置を設計・製作しました。各パーツは知り合いの真空装置メーカーによって作っていただいた特別注文品。20年来の付き合いになりますが、超高真空技術を持っている人達も高齢化しているので、研究を支える特殊技術を受け継ぐ若い人にも頑張って欲しいと思います。研究成果を出すには種々の厳しい条件をクリアするという苦労もありますが、その分結果が出たときの嬉しさもひとしおです。特に面白いと思うことは、実験や研究で思った通りの結果が出た時よりも、そうでなかった時ですね。意外な結果になった原因を解明したり別の条件でさらに試すことができるからです。

一見回り道のように見えますが、新しい発見もあります。具体的には超伝導素子に外部磁界を一方向から加えていた実験を、多方向から加えるようにしたら思いもよらない結果が出たこともあります。
研究の応用についても日々考えていますが、まずは磁界を加えているときに超伝導デバイスで何が起きているのかを究明したいですね。条件によって起こる現象が異なるのは当然なので、細かく調べて一歩一歩進めている間に30年も経ってしまいましたが、毎日毎日がスタート地点だと思っています。現在、世間的には超伝導デバイスとしてシリコンデバイス(集積回路等に使われる半導体)が非常に優秀な素材として広まっていますが、将来的にはそれに取って代わるようなものができればと思っています。超伝導を用いた集積回路ができれば、より高速な処理ができるようになり、コンピュータが大きく発展することもが期待できます。しかし超伝導を用いた集積回路は信頼性高く作ることが難しく、目下、苦労しているところです。

Image  Engineering  Laboratory
新量子現象を探して 

ものづくりで大切なことは、植物を育てるように細かな行程の全ての条件をひとつひとつクリアにしていくこと。また、新しい装置や独自の工夫で初めて、新しいことができるということです。コンピュータの進化に助けられることもあり、昔はできなかった自動測定ができるようになっています。シリコンデバイスに代わるものを目指して研究しているのにシリコンデバイスの恩恵を受けているのは皮肉なことですが、超伝導という分野でも、新しい現象や材料が見つかれば画期的な発見となります。超伝導を用いたリニアモーターカーも、同じ超伝導現象を使っていますが、そういったことにも自分の研究が役立てることができれば研究者冥利に尽きますね。
私は研究を通じて、未知の世界を垣間見たいと思っています。バージンスノーに一歩を踏み出すように。結果が簡単に説明できることは面白くなくて、わけのわかならいような物理現象を測定してみたいと思い、日々、少しでもいいから、前進したいという気持ちで研究しています。

当研究室の学生も入ってから超伝導に興味を持つようになりました。小さい頃からゲームや電子機器など、誰でも使える使い勝手がいいものに触れているので、研究装置には最初抵抗があるようです。ですが、ものづくりをしたいという情熱を持って研究に取り組めば、きっと誰も見たことのない世界を見ることができると信じています。

量子デバイス研究室 超伝導体・量子効果デバイスの電気的特性・磁気の測定